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4.猫の足跡 冬の印象による四つの小品より

4.猫の足跡 冬の印象による四つの小品より

ピアノ連弾のための四つの小品集。

 

「雪道に残る猫の足跡ほど想像を掻き立てるものはない。目に浮かぶのは貴族然とした黒色の飼い猫だ。しなやかに伸びる長い尾をゆらしながら凛とした姿勢で歩き回るが、縄張りから外に出ることは意味がないので、冒険というほど遠くへ行くわけでもない。途中で隣家のコンクリート塀の上に飛び乗り、立ち止まって欠伸をしている。空高く飛ぶトンビが目に入ると、その柔らかな手足の裏から鋭い鉤爪を出し、勢いよく飛んで宙を切ってはそのまま器用に着地する。しばらく続けはするがいずれ諦めて、何事もなかったように同じ姿勢で再び歩き始める。見回りも終わりというところでこちらに気づき2つのオパールの瞳を向けてくる。ヴァイオリンを思わせる、その掻き鳴らすような鳴き声は官能的な悦を私に持たせ、ああ、この手に触れようと思ったところでそれが足跡の幻影だと気づくのだ。」

    ¥600価格
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